詠み人知らず
勝ったな。
漫画・4月の感想1
■かがみ ふみを『まちまち②』  ★★★☆☆
まちまち②背が高いというコンプレックスを抱く少女・高木 史子。
背が低いというコンプレックスを抱く少年・古賀 勇大。
そんな凸凹な幼馴染の甘酸っぱい恋愛を描いた漫画の最終巻です。

試験対策(という名目で!w)の為に、数年ぶりに勇大の家を訪れた史子。
変わってない部屋に、見た目、心ん中、相手に対する想い・・・色んな意味で
変わった2人という対比が良かったですね。勇大が感じた気恥ずかしさは、
普段当たり前の様に使っている自分の部屋が、1人、好きな人がいるというだけで、
一変する事への驚きと、嬉しさだったんでしょうな。そしてそれが口にせずとも、
史子に伝わる。言葉を必要としないその関係には、最早何人たりとも間に入る余地は
ありませぬ。思えば、こういう関係になった当初より、2人の間に言葉は少なかった。
相手が今何を想い、何を伝えたがっているのか分かっていたからな。
だからこそ暴走して誤解を生んでしまうこともあったけど・・・全く、
最初からそこまでの仲なのに、君達は何をちんたらちんたらしているのかね!?w

一方、2人が変わっていく中で彼等をとりまく史子の親友達も変わりつつあった。
一番顕著なのは無二の親友の小雪だろうなぁ。彼女は背が小さく、童顔で・・・。
でも、全くそんな事を気にしていない、男勝りな性格を持つ女の子。
史子と完全に対照的な小雪は今まで、踏み出すことを怖がっていた史子の背中を支える
親代わりでもあった。しかし、史子が小雪とおそろいのシャーペンを、勇大とおそろいの
それに変えた時、彼女は今が“子離れ”の時期である事を悟ったんだよな。

あるよなぁ、風景や校庭の大きな木、文房具や服など長年使っていた物言わぬモノに
よって自分が今人生の岐路にあり、新しく方向を見定めないといけない瞬間ってのが。
使い古したある物を見て「ああ、これを買ってもう~年も経つのか。
そろそろ動き出さないとなぁ」みたいな事、誰しも思った事あるよな。
小雪は今、正にその状態になった訳よ。彼氏を作った事が無かった小雪は、
無意識のうちに新しい出会いを求めるようになる。そして彼女が出会った人は・・・。
これはスピンオフで読みたい気がする。小雪がその人に抱いている気持ちが、
これからどのように変化するのか凄く気になる。他人が見ても分かる通り、
彼女とその人の間には絶対的に超えられない大きな壁があるんだよ。
でも小雪ならその小さい体でも乗り越えそうな・・・ああ、気になるわw

試験対策の件でほっぺにちゅーまで言った2人。分かれる際、今まで普通に
「また今度」を交わしていた2人だが、ここにきてその言葉の薄っぺらさに気付く。
「また今度」を「また今度」で返さない大切さと、それ以外の答えを言う勇気に
なかなか辿り着けない2人。このシーンは後頭部を殴られるような衝撃を味わった。
確かに「また今度」とは何とも意味の無い言葉だ。それが知人同士ならまだいいが、
史子と勇大のような始まったばかりの関係であるならば・・・。
「また今度」以外の答えと、“その先”への恐怖と期待が交錯するこの回好きだわ。

小雪や、元生徒会長の先輩など仲間の力を借りて、「また今度」以外の答えを
遂に言う事に成功した2人に遺されたハードルはあれへの勇気のみ。
が、お互いを想うあまり焦りと誤解の連鎖で、史子はとっさに嘘をついてしまう。
あれを拒絶されたと思った勇大は意気消沈。2人とも同じ気持ちで、同じ場所にいるのに
なんでこうもすれ違うかな、と青春を爆発させずにはいられませんでしたw

まぁ幼馴染と最初から近しい場所にいたからこそ、失敗を怖がってしまうのかもな。
何かがきっかけで全てが終わってしまったとしても、相手とは明日も会うし、
幼馴染だしで2人の物理的距離は隣同士のままだ。なのに心の距離は
誰よりも遠くなってしまう。確かにこれは辛い、特に女の子の方はね。
故に慎重にならざるを得ない、しかも2人とも正反対のコンプレックスを抱えている。
でも!でも!相手の気持ちをそれだけ分かっているならあとはもう突き進むしかねぇ!w

すれ違えば違うほど、互いの気持ちが1つになったときの喜びは嬉しいもの。
今まで散々すれ違い、その度に道を修正し、コンプレックスを背負いながら進んできた2人の
ゴールはいかにも2人らしいものでした。無論、ゴールと言ってもそこはコンプレックスを
下ろすことができる地点にしか過ぎず、2人の関係はこれから深まっていくのですが。

1巻から通して人によっては、本当にどうでもいい事に必死になっている奴らだなと
感じた人は多いと思います。俺も身長で悩んだことの無い人種ですし・・・。
でも、そんなどうでもいい事に一生懸命になれる人って素晴らしいのだなと
思えるのがこの漫画でした。どうでもいい事をどうでもいいままにしてしまう自分が
恥ずかしくさえ思います。全てを読み終わったら、2巻の表紙裏(値段書いてるとこね)を
10秒間眺めてみて下さい。更に1巻と2巻の表紙を見比べてみて下さい。
言葉に出来ない何かが得られるはずですよ、ふふふw

キスのシーン、2人の誤解によってすれ違いが加速していくシーン、
夜ベッドの上で今日の行動を反省し相手を想うシーン、そしてあれへ挑戦するシーン。
各所で見受けられる2人の“戦い”のシーンのコマ割りは秀逸だと感じました。
漫画と言う静止画にもかかわらず、2人の1つ1つの表情を逃す事無く描写している。
1秒後のその人の心理が手に取るように分かります。嬉しい顔、不安な顔、
何かに期待している顔、覚悟を決めた顔。人間とはたった1秒でここまで
気持ちが乱高下するものなのかと驚かされます。同時に2人の刹那の“戦い”に
エールを送らずにはいられなくなります。読み手もまた1秒ごとに気持ちが揺れ動きました。
女の子なら史子の、男の子なら勇大の表情を見て、心の中で激しく同意し、
声が出ない涙を流した事でしょう。やっぱこれは誰しもが通る道なのだのぅw

この漫画は大笑いする事も、大泣きする事もありません。
たまーに、ニヤリングゲージが振り切れたり、小雪たんはぁはぁとなるだけですw
でも、心がここまでほっこりする漫画はそうそうないと思います。
漫画に感謝する漫画、それがこの『まちまち』だと思います。
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テーマ:漫画の感想 - ジャンル:本・雑誌

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