詠み人知らず
ぼくはくまたいよう!
電撃文庫・9月の感想1
■橋本 和也×さめだ小判『世界平和は一家団欒のあとに③ 父、帰る』  ★★★☆☆
世界平和は一家団欒のあとに③ 父、帰るみな不思議なチカラを持ち世界の平和を守る星弓一家。とある週末、
父にして元勇者、耕作が久しぶりに帰宅するという。時を同じくして、
軋人の前に清楚なワンピースを着てギターケースを抱えた美女が現れる。
エルナと名乗る彼女は、異世界での勇者とお姫さま時代の両親の友達だというが・・・?
人の良さそうな見た目に反して、少し腹黒いところもあるエルナだが、
軋人は次第に彼女と打ち解けていく。しかし、帰ってきた父と何かを隠しているような
エルナの間には、なぜか微かに不穏な気配が漂う。ついに動きだす事態を前に軋人の決断は――。

面白かったー!ここまで純粋に面白かったと思える作品はありそうでないわ。
2巻では少し平均的な作品に落ちたかと思ったけど、いやはや、3巻は非常に良かった。
俺も美智乃みたいな妹とあんな笑える買い物行きたいわ。今のご時勢、あんな兄妹いないぜw
いい年こいた2人が買い物カゴにお菓子を入れるなだの何だのって。平和にもほどがあるw
俺なんて、妹会話した一番新しい会話が「お兄ちゃーん、『ペルソナ』の攻略本って
まだあるー?」「んぁ?もう捨てたなぁ。今やったらネットの方が分かり易いんちゃう?」やぞ!w
妹の友人にゲーム好き(この子から3回『DQ8』借りたw)がいて、
ゲーム貸すから攻略本をって会話なんだが・・・これが現実だよ!不毛だよ!w
俺も妹の友達とあはーんな仲になって、妹に互いのスパイとして諜報活動してほしいよ!w
妹は女子高だったので何度か試みたけどダメだったわ。まぁ、普通よりはガード緩い感じ・・・
と、ンなことはどうでもいい。とにかく3巻も笑って泣ける家族愛への期待は裏切らなかった。

家族間の会話では七美とのそれも相変わらず面白かった。
軋人の依頼で“あっち”に魔王を倒しに行くことに対し「LvUPするぜー」と意気込み、
漫才開始。七美の「タララ、タッタッター♪七美レベルが上がった。力が50ポイント上がった。
かしこさが200ポイントあがった」を「虚偽申告はやめとけよ」と軋人、七美はすかさず
「・・・特技・残虐弟殺しを習得した」と返し、最後に「すんませんかしこさMAXで結構です」の会話。
これから頑として自分の意思を曲げない父親と対峙にしに行くってのにこいつらは・・・w
マジレスすると、七美は言う事を全然きかないので、かしこさは20以下だろ?
七美はいつも「ガンガンいこうぜ」じゃねぇか。ちったぁ「めいれいさせろ」!w

エルナが“あっち”の世界の並行世界に住人だと言う事と、彼女の真の目的を見抜いた耕作は、
それを否定するし、今度は世界平和よりも極小な存在、けれど世界で唯一のもので、
今の耕作にとっては世界平和と天秤にかけても重いものを護る為に再び勇者様と化す。

今、困っている奴が目の前にいる。それを俺は助ける事が出来る。
後悔なんてもう沢山だ、俺は何が何でも“あっち”の世界へ行くという軋人。
お前は何も分かっていない、物事が全て万事自分の力だけで解決出来るとでも思っているのか。
そして何より“あっち”の世界から帰ってこれる保障がない。世界で一番大切な宝物を
そんな場所へやるわけには行かない。足を折ってでも止めるという父・耕作。
2人の根底にあるのは今はもう居ない家族のこと。これがあるからこそ共に正しく、譲れない。
父が子を、子が父を認め合うってのはかくも素晴らしいものだったとは。
エルナが帰った後の一家団欒も良かった。今日も星弓家は平和でした。

エルナはエルナで苦しかったに違いない。エルナの世界は勇者(=“あっち”の世界の耕作)が
魔王に殺され、魔王エンドまっしぐらな世界だ。そこでエルナは人類の希望となるべく、
半ば強要されてジャンヌ・ダルクを演じることになってしまった。人類に光を照らし続ける為に、
異世界から新しい勇者と言う名の生贄を見つけてこなければならなかった。
そうして辿り着いたのが星弓家が暮らす“こっち”だったわけだ。

エルナは「私は後ろから命令してればいいんですよー」と笑顔で軋人に語っていたが、
後ろに陣取る奴が前線で負う傷を無数につけるはずがない。彼女は最早死に体の世界を、
誰の為に、何を護るのかも分からずただひたすらに死の恐怖を纏っていたんだ。
確か勇者様ってのは世界を救う動機不順、不確定だよな。物語を振り返ってみれば、
行く先々の村でのイザコザ解決とか、お悩み解決出張業みたいなことしかしてなかったりする。
エルナもそうであったようで、殆ど世界の崩壊を運命として受け入れていた。
星弓家の子供たちを“戦力”として連れ帰る任務も現状と、耕作の子を思う気持ちに知り、
諦めていた。結果、彼女は耕作が使っていたでんせつのつるぎだけを受け取って帰還した。
・・・が、その心は来る前と違うもので満たされていたハズだ。

軋人と交わした「また」の約束。文中でも強調されていたことからその思いの強さが窺い知れる。
護るものが無くなってしまった世界ではなく、ようやく護りたいものが存在する場所を得る事た。
「世界を救ってくれ」と抽象的な文言と50ゴールドとどうのつるぎしかくれないケチな王様ではなく、
「また遊びに来い。家族全員で歓迎する」と最強の武器をくれた好きな人への恋慕の気持ちも得た。
これで彼女の勇者の動機は万全だ。今、彼女の中にはしっかりとした信念があるはず。
これなら劣勢から世界を救えるに違いない。そして「また」を現実のものとするに違いない。

この物語のヒロインは柚島だと思うんだけど、ようやくライトがあたりだしたってトコかな。
エルナへのやきもちや、遊園地でのお化け屋敷のエピソードなど、ニヤリングな箇所が出始めた。
エルナに軋人との関係を聞かれて赤の他人ではなく「お友達です」と答えたあたりも・・・w
やっぱりメインは家族であり、一家団欒なようだ。柚島ももう家族になっちゃえよw

ここに一石を投じるのは多分「また」なんだろうな。「また」が達成されると、
エルナが軋人のはじめてを奪ったことを知るだろうし、エルナも本格的に意識するだろう。
軋人も初恋再燃となるわけで、これはいよいよ団欒な日々に終止符が!?w

一方、耕作サイドにも「また」の影響は貼り知れない。耕作が並行世界のエルナだと気付いたのは、
“あっち”の世界のエルナと性格などが違っていたせいである。・・・と考えると、
そこまで分かっちゃう間柄だったってことですよね?耕作は超女好きですしw
だったらこっちも再び志乃の怒り爆発で星弓家の団欒ピンチが拝めそう。

美智乃の初恋は「秘密♪」だそうだが、案外それって軋人のことなんじゃないかと思う。
美智乃ってなんだかんだ言って軋人にべったりだし。いや、この「好き」は別に変な意味じゃないよ。
素直じゃなくて、でも優しくて。家族想いで、面倒に自分から首突っ込んじゃうお茶目さもあって。
そして自分の意思とか、気持ちとか、包み隠すのが下手。だからこそ相手にはストレートに、
当社比120%になって伝わる。そんな最高にダサくて格好いい頼れるお兄ちゃんが憧れていそう。

並行世界の耕作が魔王に破れ死んだ事を聞かされた時の美智乃の姿は痛々しかったな。
あれもまた、今はもう居ない家族・・・軋奈の件が根底にあるからだろう?
美智乃は意外と精神的に脆く不安定だ。それを支えてきたのは他ならぬ軋人だと思う。
そういう面からも、美智乃が他の家族にはない特別な感情を抱いている理由になっているのでは。
今回、軋人は正真正銘の初恋を経験したわけで、美智乃の変化にも注目です。
どうなるにせよ、柚島と軋人の仲を面白可笑しくかき回す役は引退しないで欲しいなw

長女・彩美は今回も出番薄。エルナと20歳代同盟を築いたが、これも「また」のフラグなのか?
彼女の仕事はアヤシイ運び屋らしいけど、車持ち故に今んとこ文字通り星弓一家の戦場への
運び屋と化している。ただ、今回の運びで愛車は耕作に破壊されてしまいましたがw
キャンプで不在だった次男・刻人も出番が少ない方。4巻はこの2人が主役だったらいいな。
もちろん、柚島と軋人の初々しく関係もちゃんと描いて下さいよ~。

うむうむ、父は偉大なり。この言葉に尽きる3巻でした。
俺のオヤジもこんなこと考えてるんだろうなぁと考えると尊敬の念を禁じえません。
時代が時代だけに星弓家の家族愛っぷりには本当に癒されます。4巻も楽しみ!
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