詠み人知らず
おろろ~
電撃文庫・8月の感想1
■ハセガワ ケイスケ×七草『しにがみのバラッド。⑨』  ★★☆☆☆
しにがみのバラッド。⑨真っ白な少女は、空にたゆたっていました。そこは、不思議なくじらが舞う世界。
忘れものの森。電波塔の上。海が近い街のどこか・・・。
傍らには真っ黒な猫の姿をした仕え魔がいました。
少女は、死神でした。それは、ひとびとの命を運ぶ存在。
真っ白な少女は、ひとびとと関わり、交わり、そして変えていくのです。
これは、白い死神と黒猫の、哀しくてやさしい物語。

薄っ!?200ページにも満たない9巻。俺には薄いとヤバいっつー脳内法則があるので、
嫌な予感がしたぜ。今回は『ニノ』『午後の猫』『金魚の泪』『ひかれる星の顛末』の4本。
前3本は哀しくてやさしい物語、最後の話はいつも通りモモに関するお話です。

『ニノ』はぶっちゃけるとネトゲーのデバッガーがネトゲ廃人になって逝ってしまう話。
まさかこの世界観でネトゲーが出てくるとは思わなかった。いや、『しにバラ』は基本的に
現代の日本(ぽい場所)を舞台にしてるようなのでこういう話がでてきても不思議じゃないし、
アリだと思うけど、最初は面食らったな。最初は「これはネトゲーの世界ではないですよ」
という感じのボカした書き方で、中盤からバグとか、“誰か”とか、NPCとか「あれ?」と
思わすような単語を並べて、実は・・・というカタチで話は進んでいった。途中、主人公は
同じバイトの子と仲良くなるんだけど次第にネトゲーにはまりこんで、彼女とも別れ、
最後には廃人となって死ぬ(「死んだ」とは書いてないけどね)。映画版の『コナン』で
こーゆーゲームあったよな。人自身がカプセルに入って、ネトゲーを体験するってやつ。

まぁ、ネトゲーネタ自体はいいとして、モモをネトゲーの中に登場させたのは解せんのぅ。
あれは主人公の頭ん中に出てきたって感じなんだろうけど、彼のような存在にモモが
姿を表す必要があったのか。寧ろモモは「彼の前に現れたかったのか」とさえ思ってしまう。
結局何もしなかったし。モモは死神だか「あんたもう死にまっせ」はモモの仕事じゃないぞ?

主人公の「もうどうでもいい」な生き方を見ていると、今回の話は“救い”がなくても
別に良かったとは思うが、ネトゲーという現実じみたネタを持ってきただけに
『しにがみ』の世界では現実離れした感が否めない話だった。
ぶっちゃけ「なんだこれは」というのが一番の感想。

『しにバラ』はテーマん中にMemento mori(=いつか来る死について考えて生きる)が
あると思うんだけど、3話目の『金魚の泪』はそれに近い話だったかな。9巻の中では
一番『しにがみ』らしい物語だったと思う。好きだった男の子が余命幾許もなくて、
自分の気持ちを伝えられず、無為に時間を過ごし“別れ”を待っている女の子が主人公。
夕闇に染まる鉄塔なんてイイカンジじゃないスか~。俺ぁこういう直球ストレートな方が好き。
ただ最後がなぁ。もうちょっと書いて欲しかった。もしかしたらこの話はこれからの
巻に“リンク”して出てくるのかもしれないけどね。紙飛行機のくだりで
他の話と“繋げる”事も可能だと思うし。ちょっと期待しておこー。

主人公やヒロイン、およびモモ達の“絡み”が少なくなってきたことないスか?
主人公とヒロインは物凄く淡白な会話しかしてない。モモにいたってはなんかもう
単なる不思議系少女で、登場人物たちの話題にも上らず、『しにバラ』の主人公なのに
完全に浮いてしまっている。モモの存在価値が希薄になればなるほど、各短編の存在感も
ぼやけたものになってしまう。あくまでもファンタジー要素はモモのみとして、
他は今、この時間に起っているようなものを書いてもらいたい。

主人公の前へのモモの出現も必然性がなくなってきて「え?何しに出てきたの?」と思うことも。
モモの役目は死神であるにも関わらず、人の哀しくてやさしい物語に触れ、その人を更生させたり、
自分について改めて見つめさせ、自分を大事にする事の大切さを教えたり、“終わり”を温かく
包み込んであげたりすることだと思うんだけど、最近のモモは殆どが完結してしまってから
出てきているような気がする(または物語り自体が完結しかかっている状態から始まる

ゴール間近に出てきても、出来る事は限られているし、主人公の気持ちみたいなものは、
既に達観した場所にあると思うんだ。これを動かそうとしてもなかなかそうはいかんよなぁ。
ダニエルの「ホントにお節介焼きなんだからなぁ、モモは」のような微笑ましいやり取りも、
虚しく響いてくる。俺はその「お節介焼きなんだからなぁ」の過程と、主人公とその周りの
人間ドラマ(恋愛なり別れなり)をハセガワ ケイスケっつー作家さんの筆力(?)で楽しみ
たいんだけど。ハセガワ先生的にはこれからどうしたいんだろう。新しい試みに挑戦したいのか、
このまま続けたいのか。『しにバラ』はあとがきも含めて、詩的に纏められているので、
俺のような低脳からすれば先生が何を考えているのか、言いたいのか掴みにくいです。
次回はちゃんとした「白い死神と黒猫の、哀しくてやさしい物語」を頼みますよ?
評価がちょっとアレですが、新人さんじゃないってことでどうかひとつ。
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2006/09/01(金) 19:55:31) | 読了本棚